脳血管障害は中国でも多い神経内科の病気です |
北村: |
「中国では高齢者に多い神経内科の病気はどのようなものですか?」 |
劉 : |
「脳血管障害が一番多いと思います。その他には、パーキンソン病のような神経変性疾患、糖尿病による神経障害、神経系感染症、ビタミンB1やB12などの欠乏症があります。中国の都市部の統計では、脳血管障害が死亡原因の2番目になっています。」 |
|
中医学の治療法は、漢方薬、針、灸だけではありません |
北村: |
「日本でも脳血管障害や糖尿病による神経障害は多いのですが、ビタミンの欠乏症はそれほど多くない印象を持っています。劉先生は中医学の専門家ですが、中医学の治療は漢方薬、針、灸ということになるのですか?」 |
劉 : |
「中医学の治療法には、一つは漢方薬があります。漢方薬の剤型には、湯薬(生薬を煎じたもの)、丸(3〜9gぐらいの丸薬、柔らかい)、散(散剤)、膏(膏剤と貼剤)、丹(小さい丸薬、堅い)があります(図1)。非薬物療法には、針、灸、針と灸の併用、指針、刺血、埋線、電針、マッサージ、耳針などいろいろあります。治療には、漢方薬、針、灸とマッサージがよく使われます。この他、栄養と飲食療法、運動療法、音楽療法、学習療法などもあります。認知症には、以前から学習療法も行われています。もう一つ大切なこととして、予防が重視されていることです。未病先防ということがあります。」 |
|
|
未病先防とは何ですか |
未病とは、自覚症状はないが検査では異常がある状態か自覚症状はあるが検査では異常がない状態で、まだ発病はしていないということだと思いますがそれでよいでしょうか?日本でも未病システム学会があり未病について研究が行われています。先防の意味をもう少し教えて下さい。」
「未病の意味はその通りです。先防とは、発病してからその病変を治療するのではなく、発病前に予防的に治療して病気にならないようにするということです。」
|
認知症の治療と中医学 |
北村: |
「認知症に学習療法が以前から行われているということですが、日本でも計算ドリルのようなものをすることで、前頭葉を刺激することが行われています。その他には中医学では認知症の治療のにはどのようなものがありますか?」 |
劉 : |
「銀杏叶製剤に脳保護作用があるとされていて、認知症に使用しています。」 |
北村: |
「銀杏叶ということは日本での銀杏の葉エキスのことですね。」 |
劉 : |
「そうです。その他には、いろいろな漢方生薬を混ぜた湯薬があります。漢方の専門医の処方箋があれば日本でも手に入れることができます。それから漢方薬に針と灸治療を加えることもあります。」 |
北村: |
「針ということはどこに針を打つのですか?」 |
劉 : |
「症状によって違いますが、頭を主として、四肢、背中のつぼ(穴位)にも刺します。」 |
北村: |
「認知症以外には、中医学は神経内科のどんな病気に効果がありますか?」 |
劉 : |
「中医学だけでなく、西洋医学と一緒に治療をしています。神経内科の病気では、痛みのある病気、例えば三叉神経痛、片頭痛などに針は効果があります(図2)。脳血管障害による麻痺や感覚障害、手のふるえ、筋の萎縮などにも中医学の効果があります。」 |
|
劉先生の話によると、中国では、神経内科の病気に中医学による治療と西洋医学による治療を協力して行っていることがわかりました。認知症に銀杏の葉エキス等の漢方薬を使うことは知っていましたが針治療も使われていることがわかりました。 日本と同じように音楽療法や学習療法も以前から行われていることも知りました。そして、未病先防という言葉は、これからの医療にも通じる言葉と思いました。 |
図2.針による治療の様子 |
|
この内容の無断引用・転載を禁じます。 |
←前のお話しへ
次のお話しへ→
|