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一般社団法人老人病研究会 http://gochojunet.com

『三焦鍼法』の結果:(週1回3ヶ月間施術が基本単位)

結果概要

3ヶ月後の変化

・長期にわたり周辺症状が抑制されました

・認知度スケール(MMSE)には大きな変化はありませんでした

・自立するための日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)が著しく向上しました

対象患者

認知症の種類患者数(男/女)平均年齢鍼灸施術回数/週
アルツハイマー型認知症(AD)20人(8/12)81.9最大48回
血管型認知症(VaD)8人(2/6)83.412回
生活習慣病型認知症(L-SD)40人(9/31)81.712回

MMSE

Gold-QPD鍼灸師からのメッセージ

Gold-QPD第1回研修生として、認知症の改善と予防を目的とした鍼施術を始めて約3年半が経過しました。施術回数は160回以上に達しています。 三焦鍼法を基本とした全人的アプローチにより、認知症の方の表情が明るくなり、笑顔や笑いが増え、語彙が豊かになりコミュニケーション能力が向上し、ADLや身体機能の改善がみられます。MMSEの上昇傾向もみられ、認知機能の向上や認知症の進行を抑える予防効果も期待できます。認知症に対する鍼施術の有効性を検証するためには、更なる臨床データの集積が不可欠です。がんばりましょう。(広島IGL医学専門学校 T.S.)

関連施設の主任看護師からのメッセージ

高齢者の看護(とくに三焦鍼法の施術を実施した入居者について)

1) 当施設では合計17名の入居者さんが鍼を受けました。
2)鍼灸師と最初に面談したとき、鍼施術を拒絶した方は1名でした。
3)施術を最後まで拒絶し、結局施術の体験をしなかった方は2名いました。
4)初めは拒否したが2度目以降にやっと施術を許してくれた方は2名でした。
5)施術経過の途中で気まぐれに拒絶した方が1名いました。
6)施術の効果があり、喜んでくれた方は合計7名です。
7)鍼灸施術がもっとも効果的であったのは最初拒絶した方たちでした。
8)主任から見て三焦鍼法に対する印象は、
  ・跡が残ることがなく良かった。
  ・効果はあると思います。もっと長くしていただけたら実証できることが多かったのではないでしょうか。
  ・痛みを訴える方はほとんどいませんでしたが、鍼に対する恐怖心をもたれることが多い。
  ・今回取り組んだことで、ご利用者には良い刺激となり、ご家族からは喜びの声が聞かれ、
     施設としては良い経験ができました。

鍼灸によるQOLの向上報告

症状改善項目
ADL日常の動作の改善
転倒の予防関節のこわばり、しびれ、マヒ
食欲嚥下、消化
便通便秘、尿量減少、失禁
睡眠不眠症の改善
気分・リラックスうつ傾向、情緒
物忘れ認知症予防

天津中医薬大学第1附属医院 元院長 韓景献教授(当社団の顧問)

現在、全世界では2430万人の老年性認知症(AD)の患者がおり、平均7秒ごとに1人の老年性認知症(AD)の患者が発症している。中国では65歳以上の高齢者中、MCI(軽度認知障害)は30%を占めている。本病の発病メカニズムの解明、老化および老年性認知症の予防と治療の方法の開発は、医学会の重要な課題とされている。

韓景献教授が創立した「益気調血、扶本培元」鍼法には、「三焦の気を動かし、三焦の血を整え、後天の本を助け、先天の元を培う」という効果があり、老年性認知症患者の智能状態と生活能力を改善することができる。臨床研究および基礎実験研究により、本治療法は脳老化に対して確かな効果が認められることが実証された。さらに一定程度、動物の生存期と生殖器を延長させることが実証された。これらの研究成果については、国内外の専門家の普遍的な認可を受けている。

435名の血管性認知症と老年期認知症患者に対する臨床試験研究を通じて、本治療の血管性認知症(VD)に対する短期効果と長期効果が、ともにヒデルギンによる効果よりも著しく優れていることが実証されている。智能状態と生活能力が著しく向上を示し、また良好な状態を維持できることも実証されている。本治療法は血管性認知症(VD)患者の記憶力、見当識力、計算力を著しく改善することができ、とりわけ見当識力の改善に対しては特に顕著な効果が認められた。これらの効果は、コントロール群(ヒデルギン服用群)と比較しても著しく有意であった。軽度の血管性認知症(VD)の治療効果は、いっそう高く、持続効果もすぐれている。アルツハイマー型認知症(AD)患者に対して、本治療法は記憶力、見当識力の面で著しい改善がみられ、アルツハイマー型認知症(AD)患者の日常生活能力の面においては、24週後の追跡調査時の治療効果は、コントロール群(アリセプト服用群)よりも著しく有意であった。

基礎実験研究においては現在、世界で公認されている日本の老化促進モデルマウス(SAM)を研究対象とした。これに対しても「益気調血、扶本培元」鍼法は、著しくSAMマウスの寿命を延長させることが明らかとなった。平均延長寿命は11%であり、最大では24%であった。またSAMの空間記憶の獲得と保持の改善、および再学習能力、思惟能力、分析判断能力に改善が認められ、認知症動物の全体的な認知機能において、ともに改善作用が認められた。神経病理学の研究において、「益気調血、扶本培元」鍼法は、SAMマウスの海馬神経原の脱落と神経膠細胞(グリア細胞)の異常増殖を減少させ、両者のバランスを維持させることが明らかになった。またSAMマウス脳内の新生細胞の増殖と遷移を著しく促進し、有害物質による神経細胞の損傷を除去することができる。

日本語訳:兵頭明