通院をしている勝田さん(仮名)から、79歳の母が入院をしたら認知症になるのではないかと心配なのですが、どうでしょうかと尋ねられました。勝田さんの母上には胆石があり、入院して手術をした方がよいと言われています。 |
なぜ心配をするようになったのか? |
友人の母(80歳)が入院をしたら、認知症になってしまったそうです。その方は、心不全で入院をしました。入院中に、夜中に家に帰るといって騒いだり、わけのわからないことを話したり、点滴の針を抜いてしまったりして、看護師さんを困らせたそうです。心不全がよくなり、退院できる頃には、夜間に騒いだり、意味不明の内容の話をすることはなくなったそうですが、退院前日に精神科で診察を受け、認知症と診断されたということでした。
入院前は、物忘れがありましたが、歳のせいと思っていました。まさか認知症があるとは考えてもおらず、入院したことでなってしまったと友人は言っているそうです。
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入院中のエピソードは |
点滴の針を抜いてしまったりしたのは、認知症ではなく23回の診察室で話をしたせん妄と考えます。心不全や入院という環境の変化が引き起こしたものです。せん妄の時は、意識の障害があります。注意集中や維持が困難になり、幻覚がみられたり、理解や判断が出来なくなります。そして、数時間から数日のうちに急激に出現して、症状は動揺します。せん妄は原因が無くなれば消失します。 |
友人の母について |
入院前には認知症はないと家族は思っていたそうですが、以前から認知症があったかもしれません。せん妄は、認知症の人に生じやすいという特徴もあり、せん妄が治った後に、認知症のあることがわかるのは珍しくありません。友人の母の場合もその可能性は十分に考えられます。 |
入院と認知症発症の関係 |
高齢者が、入院したからといって認知症になることはないと思います。勝田さんの友人の母のように、入院してせん妄が出た後に認知症であることがわかったので、入院をきっかけにして認知症になったと考えてしまったわけです。
入院が長くなると認知症になると心配する人もいますが、そんなことはありません。入院していると周囲からの刺激が少なくなったり、以前にやっていたこともできなくなるので、一見ボーッとしたように見えてしまうのです。退院して、以前のように家族と会話をしたり、関心のあったことを再開していくことで、元のように戻っていくと思います。
勝田さんは、入院したら認知症になったのではないということがわかり、安心をして帰って行きました。
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