2011年12月23日(金) 13:00~17:00日本医科大学同窓会館
平成23年12月23日(金)1時から5時に日本医科大学同窓会橘桜会館にて、第三回統合医療によるGold-QPD公開講座が開催されました。
今回の講座は、第一期ゴールドコース研修生全員に資格認定証を授与することと次回認定証を予定されている第二期ゴールドコース研修生を含めた一般市民への公開講座です。
概要を報告します。
冒頭に川並会長から、昨年から始まったこの講座に第一回の卒業生が天皇誕生日という記念すべき日に誕生したことと、治療現場で大いに活躍してもらいたいとの励ましと期待が述べられた。
来賓として出席された日本医科大学田尻学長ならびに大林同窓会副会長からは、西洋医学と東洋医学のコラボが同じ認知症患者に寄り添う対応をして大きな成果を収めてほしい、今後大いに期待しているとの励ましの挨拶があった。
[Ⅰ]特別講演 高齢者の救急医療とAEDの使い方
黒川顕 日本医科大学武蔵小杉病院 院長
高齢社会の現況、高齢者の疾病の特徴、最近の高齢者救急の状況、高齢者救急の問題点更には高齢者救急医療に求められるもの、終末医療など実施医家の立場から奨励状況も含めて懇切に解説されました。
後半のテーマは、新しい心肺蘇生法の一環としAED(Automated External Defibrillator;自動体外式除細動器)が普及されてきましたのでその使い方を紹介しました。
AEDを使う前に人形を用いて心臓マッサージのやり方(30回の胸骨圧迫の後人工呼吸を2回行うことの繰り返し)の実演も行いました。その後AEDの機器の紹介、パッドの貼り方、スイッチの入れ方(その際患者から離れる)、その後心臓マッサージや人工呼吸の繰り返しを紹介されました。黒川先生は背広を脱ぎ、汗だくで実演されていました。
[Ⅱ]認知症Gold-QPD育成講座1
(1)医療訴訟<医師賠償責任保険>について
雁金雅億 損保ジャパン医療福祉開発部リーダー
昭和38年に損保ジャパンの前身である安田火災が日本で初めて開発した。歴史は50年になるがその間米国の医療訴訟問題などの影響を受けて医療訴訟が激増し、その保険は成り立たないのではないかと危惧されたが、ここ数年は環境が落ち着いてきて訴訟件数が減少し成り立つ見通しが立ってきた。
その背景には医療安全への取り組み、インフラの整備、医師と患者の信頼関係などの改善などが考えられる。医師の賠償責任保険の歴史や課題など、背景を平易に解説しました。
この種の関連保険は他にもいろいろあるが鍼灸師の参考になるものに柔道整復師賠償責任保険がある。
・院内設備の不備 ・お灸が倒れ火傷などの事故 ・個人情報の漏えい
などの他にオプション契約が付いている。
これは柔道整復師協同組合の団体制度となっており年間数万円程度の負担である。今後のことを考え加入のメリットは大きい。
(2)大災害に高齢者施設はどのように対応したか
佐藤光男 舞浜倶楽部 施設長
舞浜倶楽部のアウトラインを紹介し震災当日の被害状況を紹介する。
施設の直接被害はなかったが液状化による周囲の地盤沈下が激しく、第一に排泄衛生の取り組みを重視した生活インフラ、電気・水道・ガスの対応と食事・入浴職員の確保と行政、関連団体との連携を確保し、民間施設としては大変速やかに運営を再開した。
この間の問題点を精査し反省と課題を確認し今後の対応とした。
この報告に関連して、天野東京都鍼灸師会常務理事からは、被災地を国境なき医師団のコメディカルとして鍼灸治療を行った経験が報告された。
また医師の立場から同様に被災地で治療活動をされた三品先生からは阪神の時と違って外傷よりメンタル面での患者が多いとの報告があった。
[Ⅲ]認知症Gold-QPD育成講座2
パネルディスカッション「認知症高齢者との出会いと臨床体験」
パネルディスカッションは川並会長が座長となって、パネラーに国島副会長、兵頭常務理事、廉隅理事がなり、さらに第一期研修生から上垣内敬司氏と武田伸一氏が加わり、今回の臨床経験を報告することからスタートした。
上垣内氏からは舞浜倶楽部において約一年間約10人以上の経験の中で興味ある事例が報告された。
MMSEやADLの点数には直接反映されることはなかったが続けることによって治療成績の向上に伴って明らかに表情、気力、集中力が向上しマージャンを始めたり積極的に外出するような変化も現れた。
なお反省するケースとしては患者に初めて接する時に患者が信頼を寄せる家族や施設の人と一緒にアプローチすることが出来なかったケースはその後鍼灸治療に拒絶を示し難渋するケースが語られ、キーパーソンとのコミュニケーションが大変大切であると報告された。
武田氏からは、ケアハウスや自宅訪問が多く認知症の重度の方はいなかったので鍼を拒絶するケースは少なかったが点数的に顕著に反映したケースはなかった。ただし回数を重ねることによって明らかに大きな変化が出てきていることが感じられたと報告された。
初めはやる気がなかった人が徐々に会話が積極的になり、かまってもらえぬことが寂しく、訪問を心待ちされるようになってきた。笑顔や目付き、気力、集中力に明らかに変化が出てきている。あせらず、ゆっくりと決して諦めないで続けることが肝要だと訴えられた。
兵頭常務理事コメント
両氏の経験報告は素晴らしかった。両氏の発表で共通していることはキーパーソンの存在である。キーパーソンがいない時は施設の人と常に連絡が取れるようにすることが大切である。二人の経験から次第に笑顔が出てくるように状況が改善してくるまで、あせらずにゆっくりとエンドレスの努力が肝要です。
健康長寿を目的とした韓型式のポイントでもあります。
フロアの研修生の中からも佐藤氏や有賀氏の体験のコメントがあった。
後藤 後藤学園理事長コメント
この会のスタートから関わり合って、会の発展ぶりに目を見張る思いです。 会長の馬力で動いている感じがする。
認知症の治療には西洋医学がメインになっているが東洋医学がそれにどうバックアップできるか、どのように融合させていくかが大切です。日本は遅れているので、行政の問題もあるが民間の力が必要で、この会の意義は大きい。
国島副会長のまとめ
キーパーソンの重要性を良く認識して、鍼灸師も街に出て在宅で接点を作って欲しい。誠実に施療してほしい。現状は医師も待っているだけでは駄目で、歯科医療も同様である。現場に出て地域と密接に接触し開拓して欲しい。
また研修手帳が配布され、この手帳に今後の予定や疑問点が解説してあるので必ず必携して欲しいとの要望がなされた。
[Ⅳ]認知症Gold-QPD資格認定証授与式
3)三コマ目(90分):
最後に会長から認定者代表に認定証が授与された。
特にその中から優秀賞として上垣内敬司氏と武田伸一氏の二名が表彰され、全員による記念撮影が行われた。
その後研修生全員と講師関係者を交えた懇親会が行われた。