一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


超高齢社会の課題
 『鍼灸師が統合医療として認知症治療に挑戦』
社団法人老人病研究会 会長 川並汪一

認知症は単なる“老人ボケ”ではなく独立した疾患である。記憶欠損を主症状とし暴力、徘徊などの周辺症状が家族に困難を強いる。現時点では残念ながら西洋医学的手法では治療法が限られていることが分かっている。


認知症を治療できる可能性は鍼灸にあるか!

認知症国際フォーラム“鍼灸と漢方による認知症の予防と治療”を昨年10月に開催した(http://www.cognimp.org/、http://www.gochojunet.com)。天津中医薬大学の韓景献教授は独自の鍼灸法で周辺症状を顕著に緩和できることを示した。それ以来、後藤学園中医学研究所兵頭明所長と11ヶ月にわたり鍼灸の有用性を体験し確認してきた。認知症モデル動物の実験で鍼灸治療が記憶力を修復し神経細胞を再生させる事実も証明された。増加の一途をたどる認知症が鍼灸で治療できるとすればそれは中医学の驚くべき成果である。このホットな“鍼灸”を高齢社会で最大に生かし応用すべきである。その意味から、鍼灸治療法の卒後教育を西洋医学的な見地から実践し社会に役立たせようと思い立った。

鍼灸をセカンドランナーから黄金の輝きのトップグループへ

鍼灸が日本の医学界で軽視される背景には明治の医療革命がある。蘭学・西洋医学が人体を解剖学的に、また原因菌を顕微鏡的に可視化する診断法に、時の政府が驚きそして傾倒したためである。一方、中国や韓国では、鍼灸師が西洋医と同様に高度な中医学の専門教育を5~6年間にわたり受講し、基礎的な西洋医学的診断学も履修するため、卒業時には医師としての基本的資格を身につけている。日本では中医学の履修内容は専門学校により余りにも多様である。高度な知識を有する卒業生がいる一方で、世間的には不十分な学習により単なる鍼灸技術者に過ぎないとの悪評も聞く。しかし鍼灸師自身の高度な卒後教育はなおざりにされ放置されている。その結果、高邁な理想に燃える鍼灸師さんの存在にもかかわらず、医師からも市民からも医療保険制度からもセカンドランナーとみなされ不遇をかこっている。

統合医療としてのいわゆる補完代替医療(鍼灸・漢方)のあり方

1990年時点でアメリカ国民は全国民の34%が16種類の補完代替医療の恩恵を受けている。代替医療機関(治療院、ルームなど)への外来回数はかかりつけ開業医への外来回数を超えるにいたっている。興味深いことに学歴が高い人、収入の多い人、知識人層など時代を先導してゆくとされる人たちほど代替療法を評価し積極的に利用している。
1992年、国民の利用関心を背景としてアメリカ国立衛生研究所(NIH)にアメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)が設置された。1998年の段階でも、全米125医学校中75校(60%)が非西洋医療の講座・単位を持つようになった。医学生の側も80%余りが代替医療を身に着けたいとアンケートに答えている。2000年にはホワイトハウスに補完代替医療政策委員会が設置された。代替医療教育体制は全米の医科大学の50%以上で既に実施されている。

わが国における統合医療の動き

丁度2000年に東大名誉教授渥美和彦先生を理事長に日本統合医療学会が創設された。西洋医学的見地から伝統医療を科学的に分析し理解する活動をはじめ、テーラーメード医療の構築を目指している。また2001年より鍼灸・漢方(中医学)が大学医学部コアカリキュラムに組み込まれたことは特筆に価する。鍼灸と漢方を勉強する機会ができたため、若い医師ほど中医学に違和感を持たず積極的にその効能を認める傾向がある。統合医療とは言ってもその間口は広く総論的であるため、統合医療が実践部分で社会に浸透するには専門性を発揮した各論への踏み込みが必要であろう。しかし、この統合医療は日本の医学界と医療制度すなわち健康保険体制に少なからぬ変革をもたらす要因となるかもしれない。

先進性と独自性さらに将来性に富む認知症Gold-QPD育成講座

社団法人老人病研究会は、自らが持つネットワークと専門家集団を利用し、このGold-QPDプロジェクトを立ち上げた。認知症医療と中医鍼灸学のわが国におけるトップレベルの専門家をこの育成講座の講師として迎え、認知症と高齢者不定愁訴関連の西洋医学と中医学の卒業後教育の最前線を網羅する。さらに天津中医薬大学、北京中医薬大学の有名教授およびその関係者とも契約を締結しており必要に応じて来日講演することになる。このような教育内容の独自性と先進性を兼ね備えた企画はこれまでに全く存在しない。この認知症Gold-QPD育成講座は、今後も年に複数回開催する準備をしている。また、ブロンズ・シルバーコースの開催は全国レベルに拡大して実施する予定であり、将来の継続性も十分に確保されたシステムである。

西洋医学的側面から鍼灸界トップの卒後教育トレーニングを

社団法人老人病研究会は、“認知症と鍼灸治療“を合言葉に、先進意欲のある鍼灸師のために卒後教育講座を開講しようと立ち上がった。
西洋医学的概念を理解するブロンズコースは、認知症専門医や専門家による講義で構成される。その内容は、臨床像の医学的見方、問診や簡易機材による診断法、高度医療機器による診断の意義、家族・介護者に必要な協力、街ぐるみケアの実際、社会連携・医療連携の実態、現在の西洋医学的治療法、成年後見制度、社会資源の利用法など多彩な領域に及ぶ。これらの基礎的情報は鍼灸師にとって未知の領域であり学ぶところは多い。また、習得する必要性もきわめて高い。
さらに中医学の基礎的で高度な概論を学ぶ講座が用意される。そこでは高齢認知症患者さんへの接触法、中医学からみた認知症診断とその対処法、認知症の好発する高齢者の一般的不定愁訴(腰痛、肩こり、嚥下障害、関節痛、脳卒中後遺症など)の鍼灸治療とそれによる認知症への影響などが講義される。今回の育成講座には、中医学の日本を代表する講師陣と韓景献先生ご本人による認知症特異的鍼灸法を教示して頂く予定である。
実習トレーニングとしてのシルバーコースでは、受講生はそれぞれの施設に毎週あつまり合計12回の実習を体験する。兵頭先生グループによる認知症鍼灸術の実習、牧田・中医クリニック植松先生グループによる脳卒中後遺症患者さんに対する「醒脳開竅法」の実践トレーニングは本邦でトップの高度な技術指導となる。

認知症Gold-QPD育成講座の全てを修了し合格するとGold-QPD鍼灸師認定証を授与

ブロンズコース全講座の受講者には試験があり合格すると“ブロンズコース修了証”が授与され次のシルバーコースで実践トレーニングを受ける資格を獲得する。合計12回の実習の後、総合テストを合格して初めてGold-QPD鍼灸師認定証が授与される。この認定証は西洋医学的中医学的に十分な素養を持つ鍼灸師としての資格証明である。鍼灸師のなかでも西洋医学的に信頼されうる最高レベルの認知症鍼灸師でありその実践者である。

近い将来“1施設1鍼灸師”の配置を目指し高齢社会のリーダーに

Gold-QPD認定鍼灸師が認知症にかぎらず高齢者不定愁訴の治療にも精通することで、高齢社会に受け入れられ、全国に分布する大規模高齢者施設には必ず一人以上のGold-QPD認定鍼灸師が配備されるのが夢である。Gold-QPD認定鍼灸師は将来の医療介護領域でトップバッターとして大きく活躍することが期待される。

社団法人老人病研究会
認知症Gold-QPD推進委員会


※本項は、「第1回認知症Gold-QPD育成講座」講演内容から引用いたしました。



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