一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


一般公開講座
認知症シリーズ:第1回 開催報告

一般社団法人 老人病研究会は、川崎市を離れ東京都で初めて表記の講座を開催しました。

日時:2014年6月8日(土)14:00~16:30 
場所:学校法人敬心学園 臨床福祉専門学校 講堂
〒135-0043東京都江東区塩浜2-22-10、地下鉄東西線東陽町下車徒歩10分
共催: 一般社団法人老人病研究会、学校法人敬心学園、学校法人後藤学園、
エーザイ株式会社、クレヨンソフト株式会社
後援:日本医科大学武蔵小杉病院、セイリン株式会社、株式会社医大サービス

会の冒頭に一般社団法人老人病研究会川並汪一会長の挨拶がありました。今回の開催の趣旨テーマは、「認知症早めの気づきと多職種との連携による予防と緩和治療」としました。

川並会長の挨拶
川並会長の挨拶

【第一部基調講演】
「認知症早めの気づきと早期介入」
日本医科大学武蔵小杉病院神経内科教授 北村伸先生

北村伸先生
(講演されている北村伸先生)

  • 認知症の人はどのくらいいるのでしょうか?益々増えてきています。
  • 認知症の早期発見はなぜ必要か?早く見つかれば、外科的・内科的治療により、治るものもある。アルツハイマー病なら治療薬があり、進行を遅らせることができる。
  • 認知症とは?その病態、症状、症例紹介、華麗に伴う物忘れと認知症の物忘れの違い。
  • 血管性認知症、レビー小体認知症、前頭側頭葉変性による認知症:病態と鑑別診断
  • アルツハイマー病の薬物治療:中核症状と周辺症状(幻覚・妄想・徘徊など)。
  • アセチルコリンエステラーゼ阻害剤3種とNMDA受容体拮抗薬の紹介と使い方
  • コリンエステラーゼ阻害剤の投与は、在宅期間を延長させるという海外の最新データ
  • 厚労省の認知症施策プロジェクトの最新提言:平成24年6月
「認知症の人は、精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の実現を目指している。
  • 望まれる社会を実現するための、社会連携の必要性
    社会連携の必要性
  • 日医大武蔵小杉病院での「街ぐるみ認知症相談センター」の活動と認知症街ぐるみネットワーク(行政・地域包括支援センター・市民団体・医療機関)作りの紹介。
    • 市民向け公開講座の開催、専門職向け公開講座の開催、 かかりつけ医ミーティングの開催、会議(行政や市民団体)への出席、講演活動、地域催事への出展、 他のコミュニティーの視察・訪問出張、街ぐるみ認知症相談センターへの見学

【第二部パネルディスカッション】

「介護家族から見た認知症~認知症の進行と介護家族の心理」:臨床心理士川西智也氏

(日本医科大学街ぐるみ認知症センター)

川西智也氏
(川西智也氏)

  • 介護家族が直面していること;認知症の進行と介護ストレス、介護家族の心理過程、介護家族の心理を左右するポイント
  • 病前の葛藤が介護ストレスを生みやすい。これまでの関係性:要介護者の症状(特に、周辺症状):ex. 妄想、幻覚、暴言・暴力
  • 認知症に関する知識:ex. 診断、症状、一般的な対応方法
  • ストレスへの対処の仕方:ストレスを和らげる工夫をしているかどうか、

    介護家族の心理過程
  • 介護を続ける上で、介護者の健康は不可欠、休息の時間:
  • 介護から離れて心身を休める時間を定期的に確保できているかどうか、
  • 介護者の健康状態:
  • 周囲の支え手の存在:ex. 専門職、家族・親族、隣人、家族会

「鍼灸は認知症対策を担えるか?」敬心学園日本柔整鍼灸専門学校学科長青木春美氏

認知症Gold-QPD育成講座での三焦鍼法が認知症の不定愁訴に有効である事実を紹介。

青木晴美氏
(青木晴美氏)

“三焦鍼法“は、1)認知症の予防と進行阻止に貢献、2)高齢者の不定愁訴改善にも功績、 3)家族、介護士の負担減らしと施設運営に貢献、4)医師と介護士、看護師などと医療連携で貢献、5)高齢者施設で重要な役割を果せる可能性を示されました。

「認知症への鍼灸治療の導入で看護師のできること」社会福祉法人和楽会 今真由美氏

認知症Gold-QPD育成講座での三焦鍼法が認知症の不定愁訴に有効である事実を紹介。

今真由美氏
(今真由美氏)

  • 施術に先立ちご家族と利用者に十分な説明をして理解を頂いた上で語承諾書を頂く。
  • 対象者に付き添うキーパーソンを鍼灸師に紹介し安心感を与える
  • 問題行動の方にはしばしば声掛けをする。・終了後に感想を伺う。
  • 施術中に発生する問題点は施術の継続、・鍼灸師さんの性別・鍼灸師さん自身の個性
  • 時間の配分問題・鍼の紛失事故などがありました。
  • 問題は、問題毎に関係者間で解決してゆきます。
    取り組みの評価と結果は食事
  • レクレーション・リハビリテーション委員会やご家族から直接情報を集め共有した。
  • 施術を受けた方はMMSEの改善、かつての活力を取り戻し会話が流暢になった。

パネルディスカッション(司会;川並会長、兵頭明常務理事)

認知症Gold-QPD育成講座での三焦鍼法が認知症の不定愁訴に有効である事実を紹介。

川並会長、兵頭明常務理事
(川並会長、兵頭明常務理事)

  • フロアから質問やコメントがたくさん寄せられた。
  • ある女性の母親が認知症となり話もせず笑顔が無い状況でした。認知症の治療薬はすべて試みたが改善傾向は認められなかった。そんな折、鍼灸「三焦鍼法」を知り、受診しとても良くなった。この治療法を是非全国に普及していただきたい。
  • 介護は長期にわたるので介護者は疲れてしまいます。家族会などと接触を持ち介護のノウハウや悩みを共有することで孤立しないことが大切です。
  • 鍼灸を受ける際、患者は怖がって、いやがります。マッサージをしながら鍼を受けると受け入れやすい。痛くは無いですよと話しかけると落ち着く。
  • 三焦鍼法の導入は1本の施術から始め痛くないことを確認し慣れさせ効果をよく説明。
  • 三焦鍼法は単に認知症の予防だけでなく体が軽くなった、頭がすっきりしたと患者自身が驚いた例もある。
  • 80歳の母の将来を大いに心配している。今後東洋医学が役割を果たしてもらいたい。
  • 兵頭座長からのコメント:生活習慣病40例で,MMSEの改善や予防につながった症例もある。また94歳の女性で、週一回の施術で1年半を続けたところ、ご本人が元気になり、ご本人のサポート力を引き出したケースもある。
  • 川並座長からのコメント:西洋医学の専門家は東洋医学に対し懐疑的である。西洋医学は細胞やランダム化比較試験を重視する。東洋医学は5臓6腑が中心である。認知症では腎虚が元になる。患者さんごとにそれぞれの症状が良くなり喜んでもらえればよいという考え方。西洋医学と東洋医学は、将棋と碁みたいにその理論は相容れない状況である。
  • リハビリや運動療法の導入は認知症に良いか?患者から嫌われない配慮が必要。過去に運動療法が良い結果をもたらす事実は知られている。
  • 川並座長の追加コメント:ゴールドキュウピッドの資格取得者やコース受講者は北から南まで83名が活躍中である。今後ますます発展させて行くとともに、臨床データの蓄積・解析等で科学性を高めてゆかねばならない。
  • 北村パネリスト:東洋医学を全体にコメントすることは難しい。認知症に対する鍼灸療法も、今後工夫をしてサイエンスとして周囲を納得させる証明をしてゆくことが望まれます。

以上、西洋医学と東洋医学との融合に関して、最後までホットなディスカッションがなされました。最後に「患者さんに喜ばれる・お役に立つ医療」に目指して、多職種の関係者が努力する必要性が認識されました。



フロアからの質問者、会場風景



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