「今からでも間に合う健康長寿のための食事と生活習慣」 開催報告
講師:大庭 健三 先生 日本医科大学付属病院 老年内科 教授
日時:平成25年2月9日(土)14:00~16:00
場所:富士通ユニオンビル(武蔵小杉駅北口)
共催:社団法人老人病研究会、中原区医師会
後援:日本医科大学武蔵小杉病院、川崎市医師会(生涯教育認定講座)、小杉町一丁目町会、
中原区老クラブ連合会
本年度の3回目の健康の集いは、平成25年2月9日(土曜日)の午後、武蔵小杉駅の近くのユニオンビルで開催されました。テーマは「今からでも間に合う健康長寿のための食事と生活習慣」で、講演者は日本医科大学付属病院老年内科部長の大庭建三教授でした。大庭先生は、平成22年の第8回の健康の集いで「甘く見るな!生活習慣病」に続いて2度目の登場です。
当日は好天でしたが寒い日でした。熱心な聴衆は1時間も前から来場され、開演時には約90名となりました。以下に講演内容を報告します。
(講演されている大庭建三先生)
*先ず健康寿命とは、周りの人に厄介にならず、健康に過ごせる年齢のことです。日本人の健康寿命は、男で71.4歳(平均寿命は79.6歳)、女で75.8歳(平均寿命は86.4歳)です。つまり男で女とも8.2歳、女で11.6歳の差があります。如何に元気で健康年齢を伸ばすかが、その人の幸せにつながります。尚、健康寿命についての国際比較では、日本はスイスやスエーデンより長く、世界一です。
*日本人の死因は、がん・心疾患・脳血管疾患・肺炎の順でしたが、昨年肺炎が脳血管疾患を上回り、3位になりました。
*長生きするためのポイントは、要は「がんにならない生活習慣」と「生活習慣病(メタボ)の予防と治療」になります。
*昔から"腹八分目医者要らず"と言われていますが、食事制限は蝿・線虫・ネズミなどでは効果が報告されていました。最近アカゲザルで食事制限の効果がアメリカのウィスコンシン州の国立霊長類研究所から発表され、世界中で注目されました。飽食した群では、肥満となりがん、心血管疾患・脳血管疾患、糖尿病で死ぬ率が高くなっていました。食事制限食群では、糖尿病は起こらず、長寿遺伝子も活性化されることが解りました。
*老年期の肥満と生命予後について、すでに大庭教授らは日本医科大学雑誌に発表しています。浴風会の老人ホームで、506人の人について「やせた人、平均で正常な体重の人、やや小太りの人、肥満の人」に分け、20年間観察しました。その結果は以下の図のようでした。
BMIとは肥満度の指標で、%で表す。ADLとは日常生活指数と呼び、生活の状態を示します。一番長生きした群は、過体重群で84.2歳でした。しかしこの群では種々の病気から歩行不能や寝たきりの期間が長いことも解りました。老年者の肥満と痩せは寿命にとっては望ましくない。
次いで、生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病)の食事療法について解説されました。
生活習慣病では、肥満は大敵です。思春期肥満の70%が成人肥満になり、また肥満児は親が肥っている率が高いことが知られています。朝食を欠食することは、返って肥満につながることから、「早寝・早起き・朝ごはん」で過食しないことが肝要です。 次いで、がん予防の食事療法について日本人に推奨されている食事療法も紹介いただき ました。
さらに、アルツハイマー性認知症を予防する食事、骨粗鬆症を予防する食事についても紹介されました。
寿命と生活習慣については、運動が大切である。日本の高齢者では、筋肉トレーニング(マシーンを使う)と有酸素運動(ウオーキング)の組み合わせが有効で、一年後大腿部の筋力が10~20%上昇する。また60~80歳の肥満者では混合運動療法で、明らかに皮下脂肪や内臓脂肪が減り、体重減少とともにインスリンの抵抗性が改善する。このことは、別な研究でも寿命を延ばす要素になると言うデータもある。
最後に75歳以上の高齢者でも、健康的な生活をすれば寿命を延ばすことが出来るというスエーデンのデータがある。地域住民1810人を、3つのライフスタイルに分け、18年間観察した。①タバコを吸わず、肥満になっていない、②社会的繋がりをもっている・・・・引きこもりになっていない。③余暇活動への参加(趣味やスポーツなどサークル)について、①②③が出来ている人は、平均的な死亡年齢を、5.4歳伸ばすことが出来る。二つの要因を持って生活している人は、3.6歳、一つの要因を持って生活している人では2.1伸ばすことが出来る。(次の図を参照)
今からでも遅くはないので、健康的な生活をしましょう。本日講演会に着ておられる方は、引きこもりでなく、社会的関心も旺盛な方々であるので、認知症にもなりにくく、又寿命の延長に役立つことになるでしょう。「元気で長生きをしてください」ということで講演が終了となりました。
<報告者:湧口 泰昌>