- 公開講座 健康の集い
(お知らせ/最新情報) - 2016年第5回共催公開講座
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- 第25回 中高年の目の病気・トラブル
- 第24回 高齢者の救命医療で大切なこと
- 第23回 高齢者の排尿のトラブル
- 第22回 認知症:知っておくべき基礎知識
- 第21回 脳卒中治療の最前線~治せる脳卒中
- 第20回 高齢者と皮膚疾患
- 第18回 今からでも間に合う健康長寿のための食事と生活習慣
- 第17回 東洋医学による認知症の予防と改善
- 第16回 高齢者に多い精神科の病気の話
- 第15回 認知症を理解して正しく付き合う
- 第14回 増えている大腸がんのお話
- 第13回 高血圧!忍び寄る魔の手~若年者から高齢者まで
- 第12回 認知症についてもっと知識を深めよう
- 第11回 知って得する糖尿病の知識
公開講座
第21回 「健康の集い」開催報告
「脳卒中治療の最前線~治せる脳卒中」
「脳卒中治療の最前線~治せる脳卒中」 開催報告
講演者 足立好司先生 日本医科大学武蔵小杉病院脳神経外科准教授
日時:平成26年5月31日(土)14:00~16:00
場所:富士通ユニオンビル (武蔵小杉駅歩いて3分)
参加人数: 38名
協賛: 田辺三菱製薬株式会社
後援:日本医科大学武蔵小杉病院、川崎市医師会(生涯教育認定講座)、小杉町一丁目町会、
中原区老クラブ連合会
21回目の健康の集いは、当初2月15日(土)午後の開催で会ったが、当日大変な大雪で、交通機関も乱れ、かつ聴衆のご高齢者が雪に足をとられて怪我をされる心配もあり、急遽中止となった。それでも当日10名以上の方々がユニオンビルにこられたので、中止・延期のことで丁寧にお詫びをしました。
5月25日~31日は、あたかも脳卒中週間(日本脳卒中協会設定)で、新聞やテレビでは脳卒中の啓発の記事や番組が多く見られました。足立先生のご講演は、まさに時を得たものでした。
当日は初夏にしてはとても暑い日で、ご高齢者の外出には向かない天候でした。
(講演されている足立先生)
講演は5つの区分に分けられ、おのおのの内容は、図や表やイラストが駆使され、一般聴衆にも理解できる内容でした。 ・脳卒中とは ・脳卒中の症状 ・脳卒中の種類、 ・治せる脳卒中 ・脳卒中の予防 です
- 脳は臓器として約1200グラムで、体重の2%ですが、酸素の20%・グルコースの25%を消費する代謝が極めて活発な大切な臓器です。
- 昭和30年代から昭和50年までは、死因として脳卒中が第一位でしたし、中風として大変恐れられた病気でした。 現在は、がん、心不全、肺炎、脳卒中の順になっています。その背景には食塩摂取が少なくなり、蛋白質摂取の増大など栄養状態が改善され、脳出血が減少したこと、治療法の進歩で、急性期や再発の病態で致死率が大変改善されたことがあります。しかし、くも膜下出血や脳梗塞は依然として増えています。脳卒中で死ななくなったが、脳卒中後遺症としての誤嚥性肺炎の増加が著しいため、最近肺炎が死因の3位に繰り上がっています。
- 脳卒中は後遺症が残るため、厄介な病気です。介護の面から見ますと、23%脳卒中、65歳以上の寝たきり老人では、38%が脳血管障害によるものです。それだけに患者のご本人も、家族も、社会も「大変」と言うことになります。
- 脳卒中の病態は、大きく2つに分けられます。血管が破れて「出血するもの」と、血管が詰まって酸素不足による「虚血のよるもの」があります。出血では脳内出血とくも膜下出血が主なものです。くも膜下出血は動脈瘤の破裂により起こりますが、現在でも3分の一の方々が亡くなる恐ろしい病気です。一方、梗塞では細い血管が詰まるラクナ梗塞、太い血管が動脈硬化性の血栓で詰まる脳梗塞、心臓や他の臓器でできた血栓が、脳に飛んできて太い血管を詰まらせる心原性脳塞栓があります。
- 日本では毎年127,000人の方々が脳卒中で死亡します。約60%が脳梗塞、26%が脳出血、11%がくも膜下出血です(この3疾患で97%に達する)。病態の重さとしては、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞の順になります。
- 出血性の病気の症状は、突然急激に頭痛、嘔吐、失神などが現れます。梗塞性の病気の症状は、前触れの症状があります。めまい、痺れ、麻痺、失語などが一時的に現れ、時間がたつと症状が軽くなったり、消失することがあります。この状態を「一過性脳虚血発作(英語でTIA)」と言い、脳梗塞の前駆症状ですので、この段階で専門医を受診することが望まれます。
- 脳卒中の危険因子としては、年齢・性別、喫煙、肥満度、糖尿病、高血圧があります。これらを組み合わせて点数化することにより、「10年間で脳卒中を発祥する確率(%)が出ます。このスコアー表が先生より聴衆全員に渡し、自己チェックをするとともに、危険度の解説をされました。
- 脳卒中治療の最前線を紹介されました。脳内出血が予測される太い血管の部位は知られており、出血予防の治療もとられるようになっています。頭蓋に一円玉ぐらいの穴 を開け、内視鏡下結集除去術が施されるようになりました。くも膜下出血の予防としても、動脈瘤コイル術と言う手術で、動脈瘤を塞ぐこともできるようになりました。
- 頚動脈の狭窄については、狭窄部位を拡げるステンレス製のばね(ステント留置術)を埋め込む手術もされるようになりました。
- 脳梗塞や脳塞栓では新しい治療薬として血栓融解剤を注射し、血栓を溶かすこともできるようになっています。但しこの療法の適応は発作後4.5時間以内とされています。
- 脳卒中の後遺症としての麻痺に対しては、「経頭蓋磁気刺激(TMS)療法」が有効であることが知られてきました。
最後に脳卒中予防の10か条(日本脳卒中協会提言の五・七・五調)を紹介されました。
1.
手始めに 高血圧から 治しましょう
2.
糖尿病 放っておいたら 悔い残る
3.
不整脈 見つかり次第 すぐ受診
4.
予防には タバコを止める 意思を持て
5.
アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
6.
高すぎる コレステロールも 見逃すな
7.
お食事の 塩分・脂肪 控えめに
8.
体力に 合った運動 続けよう
9.
万病の 引き金になる 太りすぎ
10.
脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
講演後、5名の男女から受診の仕方、適正血圧の維持、降圧剤の使い方などの質問があり、足立先生は誠実に丁寧に答えられていました。
<報告者:湧口 泰昌>