一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


公開講座
第12回「健康の集い」 報告

「認知症についてもっと理解を深めよう」

 平成22年11月7日土曜日の午後、武蔵小杉駅の近くのユニオンビルで開催されました。
好天に恵まれ、熱心な聴衆が約160人以上集まってこられました。用意していた椅子が足らなくなり、後ろの方に更に椅子を設置するほどの盛況でした。
 認知症について、もっと理解を深めようと言うことで、3人の演者が別々の角度からの話のため、一般の市民の方々みならず、介護や福祉に関与されている医療関係者も多数出席されていました。

---------- プログラム ----------------------------------------

第1部

「アルツハイマー以外の認知症について」

講師 北村 伸 日本医科大学武蔵小杉病院 内科教授

第2部

 

「薬物を用いない認知症のケア」

講師 若松 直樹 街ぐるみ認知症相談センター 臨床心理士

「街ぐるみ認知症相談センターについて」

講師 石井 知香 街ぐるみ認知症相談センター 臨床心理士

総合司会 川並 汪一 社団法人老人病研究会長



第1部 北村伸 先生のお話

 このところ4年間ほどは毎年アルツハイマー性認知症について紹介してきました。今回は、それ以外の病気による認知症について話されました。認知症を起こす疾患としては、下表に示す疾患群です。

 個々の疾患について、症例を示しながら、診断や特徴的な症状、患者さんの生活の様子、治療をすることによる予後(改善、悪化)、等を解りやすく、丁寧に話されました。 特にアルツハイマー性認知症や脳梗塞や脳出血による血管性認知症では、徐々に悪化してゆき、治療が困難なものもあります。 しかし、原因が解り、それを治療することにより、回復がもたらせる疾患もあることが紹介され、少しほっとする話もありました。以下直りやすい疾患を示されました。

     
  • 外傷により硬膜下血腫あり、慢性化すると、物忘れ、上下肢の麻痺、失禁などの症状が出ます。このような例では、脳外科の手術により血種を取り除けば、急速に回復します。
  •  
  • 甲状腺機能低下症では、注意集中の低下、思考過程の遅延、計算力の低下、理解力低下、記憶力の低下などが起こります。血液生化学検査で、甲状腺ホルモン値が異常に低下したことが原因とわかり、甲状腺ホルモンの投与により1ヶ月ほどで徐々によくなってきました。
  •  
  • 脳腫瘍や髄液循環障害による水頭症などによる物忘れや神経症状はなども、外科手術の対象になり、回復がもたらされる症例もあります。
 アルツハイマー性認知症の次に発症頻度の高い脳血管性認知症と更に変性疾患でレビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症についても解説されました。
 脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血のあとに認知症になります。また上下肢の麻痺や言語障害も出る例もあります。CTやMRIで梗塞や出欠の跡が見つかります。脳卒中の再発があると悪化しますので、治療は再発の予防です。

 以上、「認知症を起こす疾患はアルツハイマー病以外にも、沢山の病気があります。治療・介護これからの生活のためにも、正確な診断が必要です]と言うことで、講演を締められました。

 講演後、フロアーから6人以上の方々から様々な質問が出され、北村先生は一つ一つ丁寧に答えていました。

第2部 若松直樹 先生のお話

 認知症の治療には、中核症状や周辺症状に対し種々の治療薬が処方され、症状が少しで改善もしくは進行を遅らせることに心がけられます。 その一方で、認知症への非薬物的応も大切なことで、過去から種々の療法が開発され、より良いものに改善されていると共に、現在もそれらの治療効果の検証も行われています。
 具体的な療法として、下記の表にあるごとく8種類ぐらいがあります。そのうちエビデンスの強さから実施を強く勧められるもの、実施が進められるもの、実施を奨めるだけの根拠がないものに分けられます。




 実施が強く勧められると評価されているものに、現実見当識訓練と記憶のリハビリテーションがあります。更には作業療法、理学療法、回想法、創作・芸術法、運動療法などがあり、その各々について、どんな方法なのかの解説、開発された経緯、効果、評価などを紹介しました。

 さらに認知症の予防についても言及しました。 血管性認知症の予防には、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をコントロールすること、怪我などによる認知症の予防には転倒や頭部外傷に注意し、転倒予防や歩行訓練をすることが大切です。またアルツハイマー病の予防には脳トレーニングの一環として百升計算の学習療法、旅行計画を立てる、料理をすること等も効果があるとのことでした。 
 併せてバランスの良い食事による健康的な栄養それに運動と休養も必要であることが強調されました。


       

 左: 若松 講師        右: 石井 講師


第2部 石井知香 先生のお話

 ”街ぐるみ認知症相談センター“の活動について紹介しました。この事業の始まりと設置は、日本医科大学老人病研究所が、3年前に文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業社会連携研究事業に[認知症の社会連携]で申請して採択されました。5年間にわたりかなりの額の研究費が助成され、日本医科大学も資金面での応援も伴って始められた事業です。従いまして、この事業はあくまでも研究であり、医療行為はしておりません。
 研究の主眼は「認知症の早期発見であり、かかりつけ医との連携、更にはかかりつけ医から専門医療機関との連携」です。

 当所をご利用していただいている方は、物忘れがあり、認知症が心配な方、家族が認知症ではないかと心配な方、認知症の人を介護している家族、認知症について相談したい方、誰にも相談できずにお困りの方々などです。来所されるのは、ご本人一人の場合もありますが、ご家族と一緒に相談にこられます。相談は一切無料です。
 センターに来られてから、お帰りまでは、問診とタッチパネル式の検査で、約10分程度で終わります。 物忘れの可能性のある方は、更に臨床心理士との面談による検査をして、認知症の早期発見につなげます。現在3年近くにありますが、相談に来られた延べ来場者数は約1900名、検査を受けられた方は1100名を越えています。その内物忘れの可能性があり、かかりつけ医に紹介された方は500件を越えています。
 認知症に関する社会連携の研究は、早期発見の活動だけではありません。色々な活動や連携を通して研究を進めております。街ぐるみ認知症相談センターを起点として行っている事業は、次の図に示すように多岐にわたっています。

     

本日の講演会を機に、どうぞお気軽にセンターをご利用してくださいと案内して、話を終えました。  
報告者:湧口 泰昌

開催概要

日時  平成22年11月6日(土)  午後1:30~3:30
会場  ユニオンビル   地図はこちらをご覧下さい ◆ユニオンビルアクセス◆
参加者  約160名 
 料金 無料 
 共催  社団法人老人病研究会、中原区医師会、万有製薬株式会社
 後援  日本医科大学武蔵小杉病院、川崎市医師会、エーザイ㈱、ファイザー㈱
神奈川県糖尿病協会、小杉町一丁目町会、
中原区老人クラブ連合会


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