平成23年7月2日(土)の午後、梅雨の最中の蒸し暑い気候でした。それでも熱心な市民の方々が、武蔵小杉駅近くのユニオンビルに続々と集まり、参加者は85名に達しました。今回はテーマが専門的であるため、開業されている医師が4名も参加しました。今回の共催者は社団法人老人病研究会、中原区医師会、大鵬薬品工業株式会社でした。
今回のテーマは「増えている大腸がんのお話 ~病気の基礎知識から最新の抗がん剤治療まで~」でした。講師は日本医科大学武蔵小杉病院消化器病センター部長の鈴木英之先生が務められました。
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鈴木先生のお話: |
講演されている鈴木英之先生
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・講演の内容は5つに分けて話されました。 1. 大腸がんとは? 2. 大腸がんの治療
1)手術 3. 大腸がんの治療 2)抗がん剤治療 4. お金(費用)のこと 5. 大腸がんの予防・早期発見
*大腸がんとは?
- 大腸がんは60歳代がピークで、性差は男>女となっています。人口10万人当たり、男は結腸癌と大腸がんを合わせて110人、女は61人です。
しかも、この25年間で、結腸癌は3.2倍、大腸癌で2.5倍増えています。男性では、胃がん…最近は減少傾向…に次いで2番目に多く、女性でも乳がんについで、2番目に多く発症しています。
- 先ずは大腸の構造・分類の呼称を図で解説されました。
- 症状は早期では無症状ですが病状の進行に伴い、血便、便通異常、腹痛、体重減少、しぶり腹(テネスムス)が起こります。しぶり腹とは腹痛があって、頻回に便意があるが、わずかしか排便が無い状態です。
- ポリープとガンの違い:両方とも腸内に腫れものですが、前者は良性腫瘍で、他の臓器に転移しないし、浸潤しないが、後者は他の臓器に転移をし、浸潤します。
- 大腸がんの病態は6つに分類されます。ステージ0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲa 期、Ⅲb期、Ⅳ期に分けられます。0期やⅠ期は粘膜下層におこる早期癌ですが、Ⅳ期では腸に大きな癌があるとともに、肺や肝臓などの他の臓器に転移している状態です。各期の5年生存率は0期95%、Ⅰ期95%、Ⅱ期84%、Ⅲa
期76%、Ⅲb期62%、Ⅳ期14%とされています。いわば早期発見であれば、90%以上の方が生き残りますが、手遅れになると悲惨な結果となってしまいます。それだけに、大腸がん検診を受けて、早期発見につなげる必要があります。
- 大腸がんの検診は、便潜血反応検査でスクリーニングし、内視鏡検査と病理検査で確定診断となります。
*大腸がんの治療法
- 手術で癌を切り取る治療、化学療法や放射線で手術しない治療及び、手術と化学療法や放射線療法を組み合わせる治療があります。
- 手術でも、かっては開腹手術でしたが、最近では早期癌に対して腹腔鏡手術も徐々に普及しています。この手術は患者さんにとって身体の負担が軽く、入院日数も短くなります。
- 大腸癌の手術では、日本は欧米の各国に比べて、最先端の技術を持っています。逆に欧米人は不器用で緻密でないため、放射線療法や抗がん剤治療を選ぶこともがあります。
*大腸がんの治療 2)抗がん剤治療の治療については、3つの考え方があります。
①術前補助化学療法・・・直腸癌に対して放射線治療と併用して手術前に行う ②術後補助化学療法・・・再発リスクの高い症例に対して術後再発予防的に行う
③進行再発癌に対する化学療法・・・切除不能大腸癌や再発癌に対して行う
- 術前の化学・放射線療法で、劇的に癌が縮小し、本来は開腹手術のところを、内視鏡手術で成功したケースもありました。
- 大腸癌に対する抗がん剤は1957年には1種類しかなかったが、その後7種類以上の新薬が開発され、ステージⅡ、Ⅲa、Ⅲbなどでは治療成績も上がっています。
- 学会では、治療の進歩に合わせて「大腸癌の化学療法のガイドライン」が改訂して作成されています。
- しかし、ステージがⅣとなると、その治療成績は悪く、結腸癌、大腸癌に対する有効率は、いずれも10%台前半で、厳しいものがあります。
大腸癌の診断と治療の経過は、下図の如く纏められます。
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*お金(費用)のこと
- 進行がんであれば、多くの検査、抗がん剤(大変高価です)、入院費、差額ベッド代など医療費(自己負担分・・・70歳以下では3割負担)は、莫大になり、本人も家族も精神的にも、経済的にも苦しみます。一方、早期発見の場合には、軽くて済みます。以下に事例を示します。
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55歳の男性。ステージⅢbで診断され、3年1ヶ月の闘病生活を送ったが、死亡したケース:医療費総額は1700万円(自己負担分370万円)。それに差額ベッドや交通費など自己負担分が150万円で、計520万円かかりました。
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早期がんの場合の費用:55歳の男性。大腸癌検診で便潜血反応陽性となり、精密検査を行った。大腸内視鏡検査で大腸早期癌が見つかった。内視鏡的に切除した。医療費(1泊入院)12万円で、自己負担額は4万円でした。
*大腸がんの予防
- 大腸癌の予防について:予防因子としては 野菜や食物繊維を沢山食べ、運動することです。
一方危険因子としては、危険因子: 肉類やアルコールを多すぎる摂取です。肥満、喫煙も悪い因子です。いわば日本型の食事で、野菜や果物を多く食べ、肥満にならないこと、運動をすることが予防につながります。
*大腸癌の早期発見の重要性:
- 今まで紹介した如く、治療の面でも、精神的・経済的負担の面でも早期発見は重要です。それだけに便潜血反応検査を、一年に一度くらい受け、早期発見につなげることが大切です。
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フロアーの聴衆から、16人という多くの方々から、様々な質問が寄せられました。 鈴木先生は一つ一つ丁寧に、わかりやすく答えました。
<文責:湧口泰昌>
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