一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


公開講座
第24回 「健康の集い」開催報告
「高齢者の救命医療で大切なこと」

「高齢者の救命医療で大切なこと」 開催報告

講演者 日本医科大学武蔵小杉病院教授
救命救急センター長 松田 潔先生


日時:平成27年7月12日(日)14:00~16:00 
場所:富士通ユニオンビル (武蔵小杉駅歩いて3分)
参加人数: 60名
協賛: 株式会社 大塚製薬工場
後援:日本医科大学武蔵小杉病院、川崎市医師会(生涯教育認定講座)、小杉町一丁目町会、
中原区老クラブ連合会


当日は梅雨の合間の晴れた日で、暑さによる熱中症が心配もある気候でした。 聴衆の集まりが心配されましたが、開演時には60名の方々が席についていました。 川並汪一会長の開会挨拶の後、川並先生が座長につかれ、松田先生を紹介しました。 松田先生は山梨県の救命救急システムの構築をされた後、6年前に武蔵小杉病院に着任された。


講演される松田先生
講演される松田先生

救命救急センターとは? 三次救急医療を行う施設で、三次医療とは「救命処置集中医療、複数の専門領域に亘る治療を必要とする緊急性の高い重篤な患者に対応できる施設。全国には人口30~100万人当たり、1施設で全国に271施設が有ります。川崎市では3施設あり、北部では聖マリアンナ医科大学病院、中部では日本医科大学武蔵小杉病院、南部では川崎市立病院が指定されています。

  • 救急車で搬入される患者様は、心筋梗塞や脳卒中による心肺停止や自殺や事故による心肺停止や内臓破裂など実に様々です。
  • 119番の電話で救急車の要請の電話は、川崎市消防局のセンターにかかり、そこから病院の指定が行われます。救急車の中には、救命救急隊員が乗り込んでおり、医師の指示に種々の医療措置を施します。AED自動体外式徐細動器や酸素マスク等。心肺停止の患者については、消防局のセンターと当施設の間にホットラインがあり、要請を受けると病院と救急車の隊員と連絡が取れる。救命救急センターでは、医師・循環器内科医師、臨床工学士・看護スタッフなどが集まり、救急車の到着を待ちます。
  • 症例報告として、52歳の女性が心筋梗塞で心肺停止から蘇生までの一連の医療行為を紹介しました。電気ショック、薬剤投与、心臓カテーテルでの梗塞部位にステント設置、その後の低体温療法(脳浮腫の軽減)で社会復帰できました。
  • 心臓が止まっても諦めないあらゆる手段の治療で患者を回復させます。蘇生技術として、気管挿管・気管切開、人工心肺装置、薬物投与、輸血、経管栄養(高カロリー輸液)・胃瘻の造設などがあります。これらを使って生命維持をすることが出来ますが、問題は植物人間のまま生きてゆくことです。
  • 2013年10月以降の一年間に、当院に搬送された内因性院外心肺停止患者さんの数は243名。男性:女性は133:110、平均年齢74.7±16。そのうち致死性不整脈により倒れた患者さんの救命率は、92.3%で、全国平均の68.1%を有意に高い結果です。
  • 優れた設備、高い医療技術を持つ当院の救命救急センターでも、要支援・要介護の高齢者で心肺停止になった患者での予後は難しいものがあります。ある期間の43例では、亡くなった場合、2日以内が93%、3日以内が6%、植物状態が1%でした。
  • リビングウイル (Living Will) 「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。
  • ある有料老人ホームで、リビングウイルの解説会を持ち、終末期医療に関しての意識調査をしました。
    【結果】 平均年齢88.2歳、男性39例 女性75例、計114人
      心肺蘇生 気管挿管 胃瘻(既設7) 入院
    希望する 6 6 7 47
    希望しない 108 95 64 53
    未決定 0 13 36 14

    心肺蘇生、気管挿入、胃瘻造設を希望しない人が多く居られました。
  • リビングウイルと死亡場所の検討を別な老人ホームで行っています。72名の調査で、確認していなかった時期の2年間と確認後の3年間を比較しました。前期では、施設内死亡は1例、病院での死亡は9例でした。リビング ウイル確認後では、施設内死亡が35例で、病院での死亡が8例となり、病院での死亡が少なくなっていました。
  • 松田先生は、本日の講演を以下に纏められました:
    現代の救命医療の現場では、心停止している患者さんでも蘇生が行われ、結果として植物状態に陥る患者さんがおられる。
    高齢者で障害をお持ちの患者さんが心停止した場合は、救命ならびに意識の回復は、きわめて困難である。
    植物状態になる危険も考えた上で、救命医療、延命治療を望むかどうか、ご自身の意思を表明し、ご家族の承諾を得ておくのが望ましい。

講演後、10人の聴衆から、様々な質問が有りました。それに対し松田先生は、救命救急医療やリビングウイルについて、丁寧に分かりやすく説明されていました。


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