一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


公開講座
第13回 「健康の集い」 報告

講演タイトル 高血圧!忍びよる魔の手 ~若年者から高齢者まで~

 平成23年2月19日(土)の午後、晴れてはいましたが、寒さは厳しい気候でした。それでも熱心な市民の方々が、武蔵小杉駅近くのユニオンビルに続々と集まってきて、開演前には約140名の方々で、会場は一杯となりました。
今回のテーマは「高血圧!忍び寄る魔の手 ~若年者から高齢者まで~」でした。演者はお二人で、最初に宗像一雄先生(日本医科大学武蔵小杉病院副院長・内科教授/社団法人老人病研究会常務理事)で、演題名は「高血圧―間違っていないか自分の知識―」です。
次いで輿水学先生(日本医科大学武蔵小杉病院栄養科・管理栄養士)で、演題名は「食塩をコントロールするときのポイント」でした。以下にお話しの要約を紹介します。

---------- プログラム ------------------------------------------------------

第1部  「高血圧症ー間違っていないか自分の知識ー」

講師    宗像 一雄(日本医科大学武蔵小杉病院 副院長)

第2部  「塩分をコントロールするときのポイント」

講師    輿水 学(日本医科大学武蔵小杉病院 管理栄養士)

総合司会 川並汪一 (社団法人老人病研究会 会長)


第1部 宗像先生のお話:


    

  • 高血圧の患者さんは、全国で4,000万人と推定されている。その半数は治療を受けていない。治療中の患者の半数は、血圧のコントロールができているが、残りの半数はコントロールできていない。
  • 高血圧は、一定した自覚症状が常に起こっているわけではなく、ほとんどは無症状である。そのため、サイレントキラー(静かな殺人者・忍び寄る魔の手)とよばれ、ある日突然心筋梗塞や脳卒中(脳出血・脳梗塞)を発症し、命をとられやすい。たとえ命が助かっても、後遺症が残り、負担が大きい。
  • 心筋梗塞や脳卒中(脳出血・脳梗塞)は、動脈硬化が基盤にあり、血栓が出来て血管を閉塞したり、出血を起こす。
  • 熱々が高くなればなるほど、全年齢区分で循環器疾患の死亡率は高くなる。
  • 高血圧に、高脂血症や糖尿病が重なると、動脈硬化の進展は著しくなる。
  • 高血圧の患者さんは、自宅で市販の電子血圧計を利用して、自分の血圧チェックしておく(家庭血圧)。電子血圧計には、指先、手、腕で測るものがあるが、腕で測るものの方が信頼性は高い。
  • 診療所で血圧を測ってもらうと、一般に診療所の血圧が最大/最少(収縮期/拡張期)は5mmhg程度高い(医者の白衣を見て緊張するので、白衣高血圧をも呼ばれる)。
  • 血圧は変動しやすいと理解すべきである。一日のうちでも、日が変わる場合も、簡単な活動(排便、食事、会話等)、年齢でも変化する。この変化する血圧の実態(評価)は、測った回数の平均値を出せば良い。
  • 高血圧症の診断基準と循環器疾患(脳疾患と心心疾患)のリスクについて、分かり易く説明しました(下表を参照)。
  
  • 高血圧症の治療する薬は、作用機序により7種類ぐらいに分類されるが、銘柄別となると優に100種類以上ある。
  • 患者さんの血圧をコントロール出来る治療薬を選んでゆく。一般的には、降圧剤で8~10mmHgの血圧が下がる。
  • 薬の種類を増やせば、また用量を増やせば、副作用の頻度は高くなる。
  • 高血圧は適正に治療する→生活習慣の改善・降圧薬の服用→適切な血圧にコントロール →臓器障害の予防に繋がる。
  • 生活習慣の改善の十分な降圧効果ある。塩分摂取を一日6グラム以下にすると6mmHg,体重減少でも6mmHg,、運動で5mmHg,節酒で4mmHgで、合計すれば20mmHgぐらい下げることが出来る。この効果は直ぐには出ず、3ヶ月以上かかって改善した場合にもたらされる。

最後に、「たとえ血圧が高くても、適切な治療により、循環器疾患の余病を発生させることなく、生活をエンジョイしてください」と話されて講演を終わりました。フロアーの6人以上の方々から、多くの質問が寄せられ、宗像先生は一つ一つ丁寧に、わかりやすく答えました。


第2部 輿水学先生の話:


  

*高血圧の食事療法のポイントを示されました。
・食塩制限 食塩6g/日未満
・適正なエネルギー摂取:標準体重×25~30kcal/日
・バランスのよい食事: 飽和脂肪酸の摂取を控える、野菜の摂取。
*日本人はどれくらいの食塩を摂取しているか?平成20年の国民健康・栄養調査結果で 
 は 食塩摂取量は平均10.9gであり、男性11.9g・女性10.1gでした。
*日本人の食事摂取基準(2010年版)では、女性で1日7.5g未満、男性で9g未満を
目標量としています。
*しょうゆ、ソース、味噌、コンソメ、和風だしなどの食材に、どれくらいの食塩が含まれているかを紹介、更に加工食品や外食の種類別に1食あたりの食塩量を示されました。
*特に食塩量の多い食材を控えることにより、効果的に食塩量を減らすことにつながる。
*加工食品の中には、食塩量でなく、ナトリウム量の表示もある。その際の換算式は次の通りである。ナトリウムmg×2.54÷1000=食塩g
*最後に、減塩コントロールのための10のポイントを伝授していただきました(下表)。

     

 講演後、フロアーから実践的な質問も出され、答えられていました。

                                                <文責:湧口泰昌>

開催概要

日時  平成23年2月19日(土)  午後1:30~3:30
会場  ユニオンビル   地図はこちらをご覧下さい ◆ユニオンビルアクセス◆
参加者  約140名 
 料金 無料 
 共催 社団法人老人病研究会、中原区医師会、ノバルティスファーマ(株
 後援 日本医科大学武蔵小杉病院、川崎市医師会、小杉町一丁目町会、
中原区老人クラブ連合会


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